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PROJECT STORY

PROJECT

#02

ポータブルトイレ FX-30 自動計測タイプ“らくゾウくん”
IoTポータブルトイレで健康を管理し、介護負担を軽減

我が国の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、2024年に29.3%と過去最高を更新し、2040年には34.8%になると見込まれています。一方で、介護現場の労働人口は、2040年には約69万人不足すると推計され、介護人材の確保は喫緊の課題です。テクノロジーを活用した業務効率化が求められる中、アロン化成は業界初のポータブルトイレのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)化を実現しました。

MEMBER

ものづくりセンター 
ライフサポート開発グループ

  • T.A

  • T.N

  • K.I

01

プロジェクト発足の経緯

ポータブルトイレに新たな価値を

プロジェクト発足のきっかけを教えてください
T.A

ポータブルトイレは、持ち運び可能な簡易型トイレです。ベッドに近い場所で排泄を行えるため、転倒リスクの軽減・排泄の自立支援・介助者の負担軽減などのメリットがあります。
ポータブルトイレは1972年以来50年以上の販売実績を誇る当社の主力製品ですが、最近は寝室からトイレまでの距離も近く、バリアフリー住宅も増えているため「新たな価値を生み出したい」と考えていました。
そんな折、食事・睡眠と同様、排泄も健康のバロメーターとして捉え、排泄リズム・頻尿・便秘・脱水症状などを把握することで健康管理が行えるのでは、という考えに行きつきました。排泄物の重量と着座時間を計測→情報を制御ボックスに集約→無線LANでクラウドに発信→専用アプリで表示することで、遠隔でも健康管理が行えると考え、デジタルを活用した新しい付加価値をもつ製品として、ポータブルトイレのIoT化に着手しました。

02

プロジェクトにおける役割

企画・開発・保守、それぞれの役割

プロジェクトにおける役割と、プロジェクト発足時に感じた思いを教えてください
T.A

開発チームのリーダーとして構想段階から関わり、マーケティングをしながら商品企画を行いました。介護施設で市場調査を行い、排泄ケアが他のケアより精神的・身体的負担が大きい業務であることがわかりました。製品コンセプトを「“排泄重量の見える化”、“見守り負担の軽減”ができるポータブルトイレ」に設定し、困りごとを解決することで排泄ケア向上・介護負担軽減につなげたいという思いで、企画を練っていきました。

T.N

開発の主担当として、工程管理、開発パートナー先とのハードウェア・ソフトウェア両面の要求仕様・機能要件の提示、そのためのやりとりなどを全般的に行いました。これまで製品に付属するバケツやペーパーホルダーなど部品開発を主に担当していたため、入社2年目に初めて一つの製品開発を任され、頑張るぞ!という気持ちでした。

K.I

お客様のフォローアップやご要望に沿った製品の機能追加、スマホの最新バージョンに合わせたシステムのアップデートなど、保守管理を担当しています。

03

困難だったこと

わからないことをわかるように

プロジェクトを進める中で最も大変だったことは何ですか
T.N

アロン化成はプラスチックの総合加工メーカーなので、プラスチックのつくり方や構造的な強度の高め方などの技術や知見はピカイチです。しかし、今回のプロジェクトは、IoTというこれまで誰も経験したことがない畑違いの仕事。試作段階では思うようにセンサーの計測精度が得られず、設計変更・試作を何回も繰り返すなど、通常のプラスチック加工とは違った困難もありました。また、社内に知見が無い中で、わからないことをわかるように説明して方向性を決める、というシンプルなことが一番大変でした。

K.I

当社は基本、化学屋さんです。システム更改にあたり、私と開発パートナーで話し合ったことをそのまま社内で共有する、例えばクラウドの各機能・構成の名称を用いて議論をしようとしたところで、誰にも理解してもらえません。システム開発や更改自体の難しさはもちろんありましたが、化学技術者にシステム的なことを伝えるにはどうしたらいいか、そこに苦労しました。

04

工夫とブレイクスルー

自身の理解を深めることで、相手に伝わる

困難をどのように乗り越えましたか
T.N

自分が理解できていなければ、人には説明できません。製造委託先や関係会社である東亞合成の情報システム部に知見をお借りして、まずは自分の中でわからないことをひもとき、丁寧に物事を進めていきました。専門用語は噛み砕いて説明し、言葉だけではわかりづらい概念は、図やイラストで直感的に理解してもらえるよう努めました。
面白いもので、自分で調べれば調べるほど、何がわからないかが見えてきて、課題が明確になっていきます。周囲の理解・サポートを得るには、このように仕事を進めていけばいいのかと感覚的に理解できたのは、本プロジェクトの収穫の一つです。

T.A

製品開発において問題が発生した際には、その現象の原理や原則を徹底的に理解しなければ、真のブレイクスルーは決して実現できないと考えます。今回も、IoTの要となる「センサー技術」と「通信技術」について、私たちは一人ひとりが積極的に文献を調べ、開発パートナーからの助言を受けるなど、これまで当社に不足していた知識の吸収に全力で取り組みました。その過程で、メンバー同士が活発に意見を交わしながら、問題の原因について多角的な仮説を立て、モデル品による再現試験を何度も重ねて、ついに解決策を導き出すことができました。こうした挑戦の連続は、私たちにとって大きな学びとなり、各自の新たなキャリアの可能性を切り拓く貴重な経験になったと思います。

05

達成と成果

「嬉しさ」「安堵」「不安」三者三様の想い

プロジェクトが完成した時の気持ちをお聞かせください
T.A

私がこのテーマに取り組んだ理由の一つに「社会課題の解決」があります。市場調査でわかった介護職員の困りごとを解決する製品ができたことは素直に嬉しく、また、展示会での業界関係者からの反響に確かな手ごたえを感じることもできました。心折れることなく本プロジェクトを推進してくれたチームにも感謝しています。

T.N

私は製品発売直前まで、量産の手配、アプリの審査・アップロード、利用規約・プライバシーポリシーの制定、取扱説明書の作成など、製品に付随するさまざまなタスクを同時進行していたため、無事に上市できた時は「ほっとした」というのが正直な感想です。

K.I

私は製品が完成してからが仕事なので、製品・システムのメンテナンス、新機能の追加、不具合発生時の改修など、不安の方が大きかったです。リリース後、お客様からのご要望を受けて、排泄データを専用アプリだけでなく、CSVに出力して確認できるようアップデートしました。スマホや専用アプリを持たない関係者にもデータが共有でき、データの活用・加工がしやすくなりました。

06

今後の展望

トータルな健康管理

プロジェクトは今後どのように成長してほしいですか
K.I

介護分野でのIoT活用は、デジタル技術の発展や少子高齢化などの背景から、今後も進んでいくと考えられます。システムの専門家ではない我々が、ポータブルトイレのIoT化を実現できたことは強みになると思っています。従来の構造・デザインといったアナログ技術による他社との差別化だけでなく、本製品のようにデジタル技術を活用した市場にない新しい価値を創出していきたいと思います。

07

あなたにとってアロン化成とは

製品を通して社会貢献できる会社

就職活動中の方へのメッセージをお願いします
T.A

当社は、上下水道のインフラ製品等、普段目にする機会が少ないものをつくっている会社です。玩具・電機・食品・医療などさまざまな分野で使われているエラストマーという素材もあまりなじみがないかもしれませんし、介護用品も限られた人が利用するものかもしれません。しかし、みなさんの生活に密着した製品、それらがないと世の中の生活が成り立たないような製品を提供し続けています。製品を通して、社会課題を解決し、社会貢献できる会社だと思いますし、それが私のモチベーションになっています。

T.N

看護師や理学療法士といった直接的なサポート以外にも、本プロジェクトのように製品を通じた間接的なサポートがあることをぜひ知っていただきたいと思います。利用者様だけでなく介助者様のサポートもできる製品に携われるのがアロン化成です。誰かの役に立ちたい、自分のサポートをより多くの人に届けたいと思う方は、ぜひアロン化成の門を叩いていただきたいです。

K.I

従来、カメラを用いてケア・見守りするのが主流で、利用者様によってはあまり気持ちがいいものではありませんでした。本プロジェクトのようにカメラを使用せずプライバシーを配慮し、利用者様の立場に立った製品開発ができ、何よりもそれを喜んでいただけたという自負があります。
私は応用化学が専門ですが、今回IoTという新しいチャレンジをさせてもらいました。やる気があれば、それをサポートしてくれる会社ですし、そのことが自分自身の成長にもつながっています。

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