獣医師のコラム「床ずれにリラクッション」


執筆者:わかば犬猫病院 石井未希先生
・日本獣医生命科学大学出身
・猫の診療室モモとわかば犬猫病院に勤務
・JTCVM 認定中獣医鍼灸師の資格
~シニア期のわんちゃんの介護とケアについて~
シニア期のわんちゃんは、筋力が落ちてきたり病気などで自分で体勢を保てなくなってし
まうことがあります。
自分で起きあがれなくなると寝たきりの状態になります。
寝たきりのわんちゃんを介護をするときに特に気をつけたいのが「床ずれ」です。
床ずれとは
寝たきりのわんちゃんは筋肉や皮下脂肪が少なくなっています。そして、寝たきりの状態は肘や肩、腰や踵など骨が出っ張っている部分の皮膚に体圧がかかり続けることで皮膚に穴が開いてしまいます。この状態を「床ずれ」といいます。小型犬よりも中型犬や大型犬で多く見られます。
初期は皮膚が赤く薄くなります。その後水ぶくれのようになりジュクジュクした状態となります。更に進行すると骨が見える程の深い傷になってしまいます。
シニア期のわんちゃんは病気で皮膚が弱くなっていたり寝たきりの状態では常に同じところに体圧がかかるため、一度床ずれになると治りにくく治療にが長期に渡ることもあります。
もし床ずれになってしまったら
患部の周りの毛を刈って生理食塩水や水道水でしっかり洗い、なるべく患部に体圧がかからないような体勢にします。排泄物が付いてしまったり細菌感染を起こすと悪臭が発生してしまうので患部を清潔に保つことが大切です。
そしてなるべく早く病院に連れていきましょう。
病院では洗浄を行って不必要な組織を取り除き、必要に応じて再生を促す軟膏や特殊なテープが処方されます。
感染が認められる場合には抗菌剤の投与を行うこともあります。
床ずれは予防が大事
床ずれは治りにくいため、予防がとても大切です。床ずれを予防するためにできることは
・床ずれ防止用のクッションやマットを使用する
・定期的な体位変換(寝返り)をする
・リラクッションを使って床ずれになりにくい体勢で介護する
以上があげられます。
寝返りは2~3時間毎に行うのが理想です。寝返りをさせてあげる時はわんちゃんを仰向けにすると内臓に負担がかかってしまうのでうつぶせの姿勢で行いましょう。
床ずれ防止用の介護用品は様々なものが販売されています。
ご自身のわんちゃんに合っているものがわからないときはかかりつけの動物病院に相談してみましょう。
リラクッションとは?
リラクッションは寝たきりのわんちゃんでも立った状態を維持することができるビーズクッションです。
立った状態で過ごせるので肩や腰の部分は床ずれを起こすことはありません。
( ※お腹はクッションとくっついたままなので床ずれのリスクはゼロではありません。わんちゃんの体格に合ったサイズを使用し、時々お肌の状態を確認してください。)
また、リラクッションは食事の時に顔をあげた状態で食事ができるので、誤嚥の予防ができて介護するご家族の負担も減らすことができます。
リラクッションでプラスアルファのケアを
リラクッションを使用するメリットは床ずれの予防だけではありません。
リラクッションを使うことで寝たきりのわんちゃんにもマッサージや鍼灸治療鍼(治療は獣医師が行います。)を行うことができます。
背中にはたくさんのツボがあって、このツボをお灸で温めたりマッサージをすることで痛みを緩和したり免疫力を上げることができます。
マッサージは皮膚の血行が良くなるので床ずれの予防にもなります。
マッサージやお灸はご自宅でもできますのでリラクッションを使ってお家でもケアをしてあげましょう。
床ずれはやっかいな病気ですが防ぐことができます。
わからないこと、不安なことはご家族だけで抱え込まず獣医師や介護の専門家に相談しましょう。
其々のわんちゃんに合った介護の方法でわんちゃん、ご家族にとって幸せなシニアライフを送ってほしいです。