No.20“福祉用具”の選択制導入
〜2024年度介護保険制度改定を解説します〜

介護保険制度は、要介護・要支援認定を受けた方が介護サービスを受けられる制度です。2000年に施行されて以来、3年ごとに社会情勢や環境変化などに合わせた制度の見直しにより、利用者やご家族は適切なサービスを受けることができます。2024年度の介護保険制度改正では、地域包括ケアシステムの推進や、職場環境の改善といった視点から改正が行われます。

改定の大きなテーマは4つあり、

  • 地域包括ケアシステムの深化・推進
  • 自立支援・重度化防止に向けた対応
  • 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  • 制度の安定性・持続可能性の確保

があります。

ここでは、『地域包括ケアシステムの深化・推進』のなかの”福祉用具(介護用品)”に関する大きな変更点について見ていきたいと思います。これからの介護用品の導入を考える上で、理解しておきたいポイントがたくさんあります。

福祉用具の貸与と販売の選択制導入

最初に重要な改正点は、一部の福祉用具に対する貸与と販売の選択制導入です。介護保険制度では、「利用者が必要な福祉用具を適時、適切に使用し、利用者の安全を確保すること」が大切な観点となっており、原則として福祉用具は貸与を基本としています。一方で貸与になじまない性質のもの(他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感があるもの、使用によりもとの形態・品質が変化し再利用ができないもの)は、福祉用具の販売対象となっていて、購入費を保険給付されます。

今回、貸与と販売の選択制を導入される福祉用具は、もともと貸与の対象品であった固定用スロープ(可搬型を除く)、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、及び多点杖で、比較的低価格で購入することで利用者の負担が軽減できるものに限られます。具体的な選択制導入のプロセスでは、福祉用具専門相談員や介護支援専門員が利用者に十分な説明を行い、必要な情報を提供します。医師や専門職の意見、利用者の身体状況を踏まえた上で、最終的な提案が行われます。

なお、特定福祉用具は同一品目を購入できませんが、固定用スロープは複数の利用が想定されるため、複数個の購入が可能になるようです。

モニタリング実施時期の明確化

福祉用具の正しい利用と保守管理のためには、定期的なモニタリングが必要です。改定ではその時期を明確にし、計画の一部にモニタリングの実施時期を記載することが義務付けられています。具体的には、福祉用具を貸与する場合は、利用開始後6ヶ月以内に少なくとも一回、モニタリングを行い、貸与の継続か購入への切り替えかを検討することを求めています。

福祉用具専門相談員は貸与する福祉用具の定期的な点検を行い、必要に応じてメンテナンスを行います。では、もともと貸与品であった福祉用具を販売した場合のメンテナンスの対応はどうなるのでしょうか。基本的には販売した福祉用具の使用状況を確認するとともに、必要な場合は使用方法の指導や、メンテナンスの実施を努めるよう求められています。しかしこれは努力義務にとどまり、安全安心の確保が低下することが懸念されていて、選択制の課題となっています。いずれにしても福祉用具利用者との個別契約に基づき、適時・適切に対応することになります。

モニタリング結果の記録

モニタリングの結果は、利用者の安全と福祉用具の適切な利用状況の確認に役立ちます。このため、福祉用具専門相談員によるモニタリング結果の記録は、介護支援専門員に提供することが義務付けされます。これにより、利用者の状況に適した更なるサポートが可能となります。

福祉用具貸の安全利用のために

福祉用具に関する事故情報の公表、専門相談員の研修カリキュラム、選定基準の見直し、自治体向けの点検マニュアル作成など、サービスの質の向上と適正な給付の確保を図るための対策が検討されています。

今回の改定は、利用者一人ひとりに対する配慮と専門性の向上、そして制度全体の持続可能性を考えたものと言えます。2024年度の法改正・選択制の詳細を理解し、役立ててください。

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