
No.7知っておくべき「冬のヒートショック対策」
~高齢者とご家族に注意いただきたいポイント〜
ヒートショックってなに?
寒い日に暖房の効いた暖かい部屋から脱衣所やトイレに行くと、思わず「ぞくっ」と震えてしまったという経験はありませんか? それがヒートショックのシグナルです。ヒートショックとは、急激な温度差により血圧が大きく変動することで、失神や心筋梗塞などを引き起こし、身体へ悪い影響を及ぼしてしまうことをいいます。日常生活のなかで暖かい場所から寒い場所へ、ただ移動するだけで起きるかもしれず、時に命を落とすことにもつながりかねない大変怖い現象なのです。しかも厄介なことに、ヒートショックは浴室だけに限らず、温度差が大きければトイレや廊下でも起こる危険性があります。万が一、入浴中にヒートショックが起こると、浴槽内で意識を失いかねず、最悪の場合には溺死してしまいます。

家庭内の浴槽事故が増えています
厚生労働省の人口動態統計によると、家庭の浴槽での溺死者数は平成27年に4,804人。平成16年の2,870人と比較して約10年間で約1.7倍に増加しています。注目は、このうち約9割が65歳以上の高齢者であるということです。しかも、事故の約7割が冬季(11月から3月)に集中しており、その要因はヒートショックによるものとされています。


ヒートショックの原因
真冬では、同じ家のなかでも「暖房で暖かくなった部屋」と「暖房をつけていない浴室やトイレ」の温度差は10℃を超えるといわれています。この大きな温度差によって、血圧は急に上昇したり下降したりしています。例えば、暖かい部屋から脱衣所に移動して衣服を脱いだときには、寒さに対応するために体が熱を奪われまいとして血圧が上昇。その後、浴槽につかると、身体が温まり血管が広がることによって急に血圧が下がります。この血圧の急激な変動がヒートショックの原因です。実際、ヒートショックは高血圧や不整脈の方、とりわけ高齢の方に多く発生しています。

具体的な予防策とは
ヒートショックの原因を分かっていただいたところで、高齢者の方に是非実践して欲しい予防策を紹介します。
大切なのは、高齢者の方ご本人が注意することもそうですが、家族の方も一緒になって行うこと。ほんの少しの配慮が事故防止につながります。
〜お風呂の場合〜
「入浴前に脱衣所や浴室を暖める」
脱衣所や浴室は、暖房で暖かくして血圧の変動を抑えるようにしましょう。暖房がない場合でも、浴槽のふたを開けておいたりすると寒暖差を小さくできるので試してみてください。
「湯温は41度以下、湯船につかる時間は10分を目安に」
長い時間入浴をすると、心臓に負担がかかり疲労感が増し、ふらつき転倒しやすくなります。
「浴槽から急に立ち上がらない」
浴槽から出るときに、急に立ち上がると血圧が急激に下がりかねません。立ちくらみを起こして転倒する恐れがあるので、ゆっくりと立ち上がるように心掛けてください。
「食後すぐの入浴は控える」
食後は消化器官に血液が集まり、平時より血圧が低くなっています。時間をおいてから入浴するようにしましょう。
「入浴する前に同居者に一声掛ける」
高齢者が一人になる浴室内は注意が必要です。入浴前に「今からお風呂に入るよ」と一言声を掛けるようにしてください。数分おきに家族の方に見回ってもらえれば、より安心です。
「身体に負担をかけない用具(温浴シャワー)を使う」
湯船につかると、血圧や心拍数の変動が大きくなり、心臓や循環器への負担が大きくなります。その場合は温浴シャワーベンチを使用すると湯船につからずとも体を温めることができ、身体への負担を減らすことができます。

〜トイレの場合〜
「トイレに暖房器具を設置する」
トイレに暖房器具を設置することで、温度差を抑えられます。その際、セラミックファンヒーターのような速暖性に優れた暖房器具がおすすめです。人感センサーがついている製品もあるので、状況に応じて工夫してみてください。また、便座には暖房便座を使用しましょう。
「いきみすぎに注意する」
トイレでいきむことも血圧を上昇させます。暖かい部屋から移動した直後に力を入れ過ぎないようにしましょう。
「ポータブルトイレを設置する」
ポータブルトイレを活用すれば、寒い廊下やトイレに移動する必要がなく、ヒートショックのリスクを低減できます。暖房便座がついたものも選べるので、検討されてはいかがでしょうか。
